ナース指導者が教える 夜勤の転倒転落予防・離院に対する安全管理とは
看護師は入院中の患者さんが安全に入院生活を過ごすために転倒予防、離院に対して安全管理を行っています。夜勤に転倒転落予防、離院の予防は必須です。対策はそれぞれの病院で違いがあると思いますが、私の病院での安全管理を参考にしていただくと嬉しいです。まずは私の病棟での夜勤の状況を書いているブログがありますので見てください。
現在は超高齢者社会
せん妄と認知症の違い
せん妄は短期間のうちに発症し認知症はゆっくりと時間をかけて進行します。またせん妄は1日のうちに普段どおりの状態に戻ったり興奮したりと変動します。特に夜間せん妄と言われるものがあり、夕方から夜間にかけ興奮状態になることがしばしばあり、原因疾患、環境の改善で症状は治ります。
高齢者の心理的特徴
高齢者の心理的特徴には大きく分けて「精神機能と知的能力」があります。精神機能の老化は個人差が大きいという特徴があります。その理由は、中枢神経系が年齢を重ねて変化していく中で心理的、身体的、環境的な要因が加わり、その結果として精神機能の症状が出現することだと言われています。特に記憶に関しては「新しいこと」を覚えることが困難になります。また短期記憶低下するため直近の出来事を思い出せない、覚えていないということもあります。また過去のことについても思い出すのに時間がかかります。
高齢者の不眠
不眠は加齢と共に増える傾向にあり不眠の原因は日中の活動量の低下が挙げられます。年齢を重ねれば高血圧、糖尿病といった生活習慣病をはじめさまざまな基礎疾患を合併するようになりそれが不眠につながると言われています。また精神疾患との関わりも強く、認知症、うつ病などの方も睡眠障害が認められやすいです。
高齢者の睡眠の特徴
- メラトニン(睡眠促進ホルモン)分泌減少
- 早寝早起きの朝型化の傾向
- レム睡眠の傾向
- 中途覚醒が増える(夜中に何度も目が覚める)
- 早朝覚醒が増える(早朝に目が覚めてそのまま眠れない)
夜勤で起こりやすいこと
転倒転落
不眠高齢者の特徴を踏まえて薬物療法中に夜間に起こりやすいこととして
- 転倒・転落
- 転倒・転落による骨折
離院
病棟で行っている対策
入院時に確認すること
入院時に転倒歴があるか
認知症や夜間せん妄があるか
入院時にナースコールを押せるか判断
入院時に転倒歴があるか
今までに転倒歴があるか、前施設や自宅にて転倒歴があると入院後も起こす危険性があるので入院時より安全対策をしないといけません。また前回の転倒によって骨折歴がある場合は今回転倒をしてしまうと再度転倒してしまう危険性があるので時に注意します。
認知症や夜間せん妄があるか
入院時に認知症があるか、前病院、前施設にて夜間せん妄があったかを確認します。その状況で精神療法を行っている場合があり環境が変わることで悪化することがあるからです。時に入院2、3日は起こる危険性があります。また薬物療法をされており内服にて夜間入眠できるかの情報も聴取します。
入院時にナースコールを押せるのか判断
入院時に患者自身が認知症や夜間せん妄がある患者はナースコールが押せない場合が多く、一部介助にてポータブルトイレへ移乗される方は自分が一人では立てないと意識されていない患者もいます。その時はナースコールを押さずふらつきながらポータブルトイレに移乗したり全然立てないのに端座位となりずり落ち尻餅をつく場合もあります。夜間は足元が暗く意識朦朧とされていることも多く、ベッド周囲も狭いので棚やベッド、床頭台にあたり転倒する可能性もあります。中等度、重度の認知症の方はナースコールはほぼ押してくれません。
入院中に行う対策
対策として下記の内容を行っています。
- 柵の検討
- ベッドの検討
- 部屋の検討
- センサーマットの検討
- 精神療法を依頼、内服の検討
- ポータブルトイレなどのベッド周囲の環境整備
- 離院に対しては窓がストッパー設置、ドアの鍵締め
柵の検討
私の病院は抑制防止宣言をしているとのことで4本柵は禁止となっています。どうしても必要がある際はご家族に同意書を取らないといけません。3本柵までは許可をていますので入院時に必要時は柵を増やしていいか確認を取るようにしています。足を下ろしてしまいずり落ちする患者もいますのでその時は3本柵を使用します。
ベッドの検討
ベッドは種類も多く、低床にできるものと超低床にできるもの(床まで下げることができる)があります。患者が認知症にて一人で立ち上がったりする場合、対応が間に合わない場合もあるので超低床ベッドを壁につけて緩衝マットを片側のベッドサイドにつけて転倒してもマットで保護できる対応を行うこともあります。
部屋の検討
認知症や夜間せん妄にて転倒、転落する危険がある患者はナースステーションの近くの部屋を検討します。ナースコールがなっても訪室するのが遅くなる場合はすでに転倒していることが予測されるからです。どこの病院でもナースステーションの近くに観察室があると思いますが、そこに患者を受け入れする場合があります。
センサーマットの検討
ポータブルトイレへの移乗やトイレへの見守りの歩行が必要な患者はナースコール対応となりますが認知症にてナースコールを自分で押すことができない患者は自分で歩いてしまい転倒する危険性があります。その対策としてセンサーマット、センサーベッドを使用します。センサーマットの種類はセンサーマットとタッチセンサー、サイドコールです。
センサーマット
センサーマットは業者によってもサイズは違いがあると思います。私の病院で使っているものは1.3m✖️50cmの分を使用しています。患者がベッドサイドにて足を下ろしたり立ち上がったりするとセンサーが鳴ります、ナースコールと連動しているのでナースコールで対応することができます。
タッチセンサー
タッチセンサーは柵にもつけることができ、80cm✖️10cm程です。私の病院ではシーツの下に敷き端座位になった時に鳴るように設置しています。動きが早い人はセンサーマットではなくタッチセンサーを敷き込むことが多いです。
サイドコール
サイドコールはタッチセンサーの大きい分で90cm✖️20cm程あります。これも敷き込みタイプでベッドサイドのシーツ下に敷き込むことが多いです。
センサーベッド
センサーベッドはセンサーがベッドに付いていて起き上がり、端座位など状況でセンサーが鳴ることを設定できます。センサーベッドは使いやすく患者の状況は変わることもあるので評価の際に設定をかえることもできます。
精神療法を依頼、内服の検討
認知症や夜間せん妄にてスタッフにて対応できない時は主治医へ報告し、精神科の受診を行うことがあります。精神療法、内服の検討を行い夜間に入眠を促すことで日中に精神の安定ができます。精神の安定ができないと内服拒否や点滴自己抜針などを行い治療ができません。そのためにも精神療法は必要です。
ポータブルトイレなどのベッド周囲の環境整備
4人部屋でポータブルトイレをベッドサイドに置くと部屋が狭くなり立ち上がる時に転倒しやすい状況になります。それを予防するためにベッド周囲に車椅子などをおかない、荷物が多い時はご家族に持って帰っていただくなど環境整備は必要です。患者が安全に過ごせるように毎日環境整備を行っています。
離院に対しては窓がストッパー設置、ドアの鍵締め
認知症の患者は治療のために入院していることを理解されていなかったり忘れたりする場合が多く、帰宅願望が強く出やすいと思われます。歩行される患者は歩いて帰ろうとされるため離院しやすく、センサーを踏まないで部屋から出て来られることもあるため病棟内で発見する場合もあります。エレベーターに乗り他の病棟で発見される場合もあります。それでも受付まで行き外へ出てしまう場合もあります。対策としてセンサーをきちんと設置しナースコールに早期に対応する。部屋を頻回に訪室し所在を確認する。夜間はスタッフの人数も少ないため対応が困難になる場合があるのでドアの鍵を閉める。窓から出られる場合もあるため窓はストッパーがあり人が出ることができないようにするなど対策を行っています。
最後に
今回は私が病棟で行っている夜勤での安全管理を書きました。病院によって対応の仕方は違いがあるとは思いますので私の病院での対応の仕方として見ていただける嬉しいです。超高齢者が多く、認知症や夜間せん妄の患者も増えていますので入院時はそれを予測し早めに対応しています。センサーを入院時に使い安定したのを確認し評価にて除去しています。夜勤に対してはセンサーのスイッチを切ったまま忘れて鳴らないこともあるので消灯する前にセンサーの確認を行い、介助の際もセンサーを切って対応するのでその後センサーを確認してその場から離れると言う対応をしています。また夜間入眠できるように内服調整を精神科の医師へ相談したり日中覚醒できるように車椅子に離床して対応しています。今回も絵を描いています、分かりにくかったらすみません。ご了承ください。見ていただきありがとうございました。
夜勤の急変についても作っているのでよかったらご覧ください。
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