ナース指導者が教える 地域包括ケア病棟での チーム医療 看護の役割
私は今地域包括ケア病棟に所属しています。今は地域包括ケア病棟も増えてきており入院後早期に退院して在宅にて生活できるように病院で支援が行われるようになりました。そこでは他職種の連携チーム医療がとても重要です。その中での看護師の役割をお伝えしたいと思います。
地域包括ケア病棟とは
地域包括病棟とは急性期治療を終了し在宅、施設へ退院するには退院後の生活がすぐ行えない患者に対して入院中に在宅支援など方向性を決めてリハビリを行い、その患者に合った生活ができるように生活相談員が在宅後のケアマネージャーや施設、家族と相談を行いながら早期に在宅復帰支援を行う病棟です。私の病棟は地域包括ケア病棟ですが、入院期間は60日と決まっています。入院患者さんは2泊3日のフォーリーカテーテル交換や、胃ろうボタン交換、独居や施設の方で治療目的、今後の介護認定後施設検討、整形外科手術後のリハビリ目的などの患者さんがいます。地域包括ケア病棟は他職種の関わりがとても必要です。主治医、看護師、リハビリ、栄養科、薬剤科、ソーシャルワーカーなどです。連携を行い、60日期間での入院から退院を行うことができます。
入院1日目に行うこと
入院1日目の看護師の役割として入院の受け入れを行い、アナムネ聴取を行います。アナムネ聴取とは入院時、現病歴、既往歴など入院に必要な情報を患者さんやご家族、施設から取ります。問診票を使う病院もありますが私の病院は入院時情報は紹介状として前もっていただいていますのでそれ以外での情報を聴取します。施設からの入院では転倒歴があるか、食事・薬物のアレルギーがあるかなどの情報は口頭で聴取しないとわからないこともあります。インフルエンザやコロナのワクチンなども確認も行いますが、希望される方で対応できる状況であれば問診票の記載も行います。また持参薬についてはいただきますが、薬剤師に協力してもらい確認を行います。薬剤は変更の可能性もありますので薬剤師から主治医へ確認をして準備をします。薬剤は自分で行うのか、認知症などで自己内服はできないのかなどのことも患者さんが入院後看護師が確認します。食事に関してアレルギーがある場合は栄養士へ確認し食事対応をしてもらいます。前施設や自宅にて誤嚥予防にてとろみを使用していたか、食事形態はどうであるかなどの情報も看護添書に記載しているので栄養士へ伝えます。食事も自己摂取しているのか、セッティングにて自己摂取しているのか、全介助にて摂取しているのかも看護添書で確認後実際の食事の摂取時の状況を確認します。医師情報提供書は主治医へ渡していますので医師の指示を確認します。絶食の時は栄養士へ伝え対応します。入院時の状況にてリハビリも開始となります。ソーシャルワーカーへはご家族の対応状態、施設へは戻るのかなど入院時点での患者さんの状況もふまえ伝えます。入院時にご家族がソーシャルワーカーとの面談をして退院後の生活を相談される場合もあります。
入院2日目以降
看護師は主治医の指示のもと、内服治療や抗菌剤にて点滴治療を行います。発熱が続く場合もありますので患者さんの状態に変化がある場合は主治医へ伝え対応していきます。また入院後は入院診療計画書をご家族へ説明する必要がありますのでその作成を行い、ご家族へ説明を行います。入院診療計画書は説明を行った後、本人またはご家族へ同意の署名をいただき一部渡します。これは病院によって対応に違いがあると思います。また2日目以降に他職種でカンファレンスを行い、患者さんの病状と方向性を決めます。他職種で確認をして今後の対応を協力して行っていきます。リハビリも2日目から介入を行い、退院へ向けてADL低下を防ぐように取り組みます。
入院2週間経過
入院2週間経過にて状態が安定する場合もありますが、悪化する場合は60日で退院できるか判断し方向性を決めるためにカンファレンスを開きます。これも他職種参加にて行いますが、入院時と比べて現在の状況の変化はどうか、退院後のご家族の対応状況、介護度の変化、介護認定の状況なども踏まえて話しあいます。この時点で元の施設や自宅へ帰ることができない場合は施設検討をご家族へ検討していただいたり、退院が難しい時は療養病院へ転院したり、介護医療病棟へ転棟を検討します。これもソーシャルワーカーが主治医と、検討したり、ご家族へ状況を伝え施設を探していただいたり早期の対応が必要です。入院時から自宅へ帰ることができない時はその時点で施設検討するようにご家族へ面談にてお話しする場合もあります。私の病院は介護医療病棟があり、介護医療院で行う施設となっています。以前は療養病棟でしたが現在は介護療養型医療施設の廃止に伴って介護医療病棟になりました。
介護療養型医療施設の廃止
介護医療院と近いサービス内容である「介護療養型医療施設」が2024年3月に廃止となることが決定しています。介護療養型医療施設が廃止となる理由として医療保険サービスである医療療養型病院とその利用実態に大差がなかったことが判明したことが挙げられます。加えて医療費適正化の議論を受けて、利用者の実態に応じた療養病床を介護老人保健施設などに転換することなど再編成を行う必要性があったためとされています。
参考元:厚生労働省「介護療養病床・介護医療院のこれまでの経緯 療養病床に関する経緯」
介護を必要とする高齢者のための施設
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム 通称:特養):要介護者のための生活施設
- 介護老人保健施設(老健):要介護者にリハビリを提供し、在宅復帰を目指す施設
- 介護療養型病床:病院・診療所の病床のうち長期療養を必要とする要介護に対し、医学的管理のもと行われる介護、必要な医療等を提供する施設
このうち「介護療養型病床」が廃止され「介護医療院」へ転換されることとなります。(移行期限は2024年3月まで)介護医療院は今後ますます増加が見込まれる慢性的の医療・介護ニーズへ対応するために要介護者に対する長期療養のための医療と日常生活上の介護を一体的に提供することを目的として創設されました。
介護医療院の人員基準
- I型(介護療養病床に相当):重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者等
- II型(老健施設以上に相当):I型と比較し容態が比較的に安定したもの
なおI型とII型は医療者などの人員配置も違います。
介護保険制度
2000年から始まった介護保険制度は心身の障害により自立した日常生活ができなくなった高齢者を支援するための制度です。制度の創設以来65歳以上の被保険者は2018年までに1.6倍に増加、サービス全体の利用者は3.2倍に増加しており高齢者の介護になくてはならないものとなっています。介護施設のサービス利用者も2000年4月の52万人から2018年4月には93万人と1.8倍に増加しています。さらに65歳以上の高齢者数は2025年には3,677万人、2042年には3,935万人とピークを迎えると予測されており、より効率的に介護サービスを行う上で介護医療院への転換には期待がされています。
介護医療院はどのような人が入れるのか
介護医療院は「重篤な身体疾患を有する方や身体合併症を有する認知症高齢者の方などに長期療養等を行う」ことを目的としているため要支援1、要支援2の高齢者が利用することはできません。また要介護1から5と判定されてもすぐ入居できるという者ではなく要介護が高いほど介護医療院の報酬は高く、入居を受け入れやすいようです。
参考サイト:健康長寿ネット
入院3週間以降
患者さんの入院経過に伴い今後の方向性を医師へ確認し、治療やリハビリにて症状改善にて退院が予定されます。入院に伴い今後の方向性として施設へ退院する場合、自宅に退院する場合、療養病院へ転院する場合、介護医療院や介護医療病棟へ転棟する場合など決まり、介護認定調査にて介護度の見直しが行われたら医師からご家族へ病状説明が行われます。また退院へ向けての状況をソーシャルワーカーから再度説明が行われます。入院時からソーシャルワーカーの介入は行っているため退院後に介護認定変更後から施設や自宅退院後にてどの程度介護サービスの支援が受けられるかなどの話があります。ソーシャルワーカーが相談役と介入することで退院もスムーズに行われます。退院許可が出るとソーシャルワーカーがケアマネージャーに介護サービスを確認し、施設とも受け入れ可能か確認をして退院日が決まります。自宅退院の場合はご家族の協力も必要な場合が多いのでご家族の状況にも合わせて退院日を決定します。
退院時
退院時は医師診療情報提供書、看護添書と退院処方、退院療養計画書(主治医から本人への退院のお手紙、気をつけることなどが書かれています)を渡します。退院後は訪問看護やケアマネージャーが関わりるため看護添書は必須です。医師診療情報提供書は退院後のかかりつけの医師へ向けてのお手紙を渡します。退院時に渡すものも病院に違いはあると思います。看護添書は現病歴と看護計画に対しての入院経過、継続して気をつけてほしいことなどを書いています。詳しく書き、退院後も継続看護が行えるようにします。退院時はご家族や施設迎えとなりますのでご家族や施設スタッフにも口頭で伝達事項を伝えます。退院療養計画書は退院生活にて気をつけることなどか書かれているので口頭で伝え手紙を渡します。退院処方はインスリンなどもあるので中身や保管方法についてもご家族や施設へ伝える必要があり、注意事項もしっかり伝えます。退院後他の病院に受診されるときは予約日の確認も行い伝えるようにします。物品についても退院後に忘れ物がないか、床頭台や棚の中身も確認します。
地域包括ケア病棟での看護師の役割
- 入院受け入れ
- 医師指示のもと点滴、薬剤投与
- 処置(皮膚トラブルがある場合)
- オムツ交換などの排泄ケア(介助必要時)
- 入浴などの清潔ケア(介助必要時)
- 食事配膳、食事介助、口腔ケア(介助必要時)
- 退院へ向けての他職種との連携、情報提供
- 看護添書作成
このように看護師は入院から退院まで患者が安楽な入院生活が行えるように関わっていきます。地域包括ケア病棟であり60日期間の入院となるので退院状況に合わせての関わりを行い、ADL改善が見られていないときは他職種へ相談して改善ができるようにしていきます。病状にて改善が見られないときは医師とソーシャルワーカーへ相談し方向性を変える必要性があるのか検討を行います。
最後に
私は今地域包括ケア病棟に所属しています。今は地域包括ケア病棟も増えてきており入院後早期に退院して在宅にて生活できるように病院で支援が行われるようになりました。そこでは他職種の連携チーム医療がとても重要です。他職種との関わりがないと退院までの状態改善は難しいと思います。その中での看護師の役割とは60日の入院期限を守るために他職種に情報提供を行ったり、症状が悪化しないようにケアを行うことが必要です。またご家族へも病状説明の場を作ったり、退院までの方向性がスムーズに決まるためにソーシャルワーカーへ密に関わっていく必要があります。入院中の安全管理としても転倒しないように対応したり、退院できるまでのADLに戻れるようなスタッフ間の統一した関わりも必要であると感じています。それぞれの病院で地域包括ケア病棟での看護師の役割に違いがあると思います。今回も表を作成しています、わかりにくい部分もあると思いますがご了承ください。今後の励みにしたいと思います。見ていただきありがとうございました。
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