ナース指導者が教える わかりやすい看護倫理とは 悩んでいる方に
看護師をして24年目となりましたが看護倫理は基本であり、業務を行う上では倫理を意識をしていないと業務に追われすぎて人間性を無視することになります。看護とは人を看ることと言われていますがその中でも倫理を意識した関わり方が必要となってくると日々感じています。今回は看護倫理についてわかりやすく伝えたいと思います。
看護倫理とは
看護倫理を学ぶ上で倫理を理解することが大切ですが、インターネットで調べると倫理とは、物事の善悪、正しさや不正などの判断の規準となるものである。モラル、道徳ともいうと表記してありました。看護倫理は大きく3つ「倫理原則」「倫理綱領」「臨床倫理」からなります。「倫理原則」は4つの原則と2つの原則、「倫理綱領」は16項目、「臨床倫理は」4分類あります。
看護倫理原則
全ての患者さんに質の高い医療・看護を提供するために守るべき原則です。「医療倫理学に基づいた4原則」と「医療専門職の義務・基礎となる2原則」の合わせて6つの原則から構成されます。
医療倫理学に基づいた看護倫理の4原則とは
医療倫理学に基づいた看護倫理の4原則とは「自律性の尊重」「無危害」「善行」「公正」である。「自律性の尊重」とは患者さんが自律的に物事を決定し、行動することを尊重し、それを妨げないことである。「無危害」とは患者さんに危害を加えないこと、また危険を予防することである。苦痛を引き起こさず、可能な限り侵襲が少ない方法を選択できるように援助することなどを含む。「善行」とは最善をつくすことである。ただし最善とは医療従事者が考える最善ではなく、患者さんにとっての最善、患者さんが考える最善のことである。「公正」とは患者には常に平等・公平に対応することであり、限りある医療資源を平等に配分、提供することも含む。
医療専門職の義務・規則の基礎となる2原則
医療専門職の義務、規則の基礎となる2原則として「誠実の原則」と「忠誠の原則」があります。「誠実の原則」は嘘をつく、情報を誤魔化す、人を騙すなど信頼を損ねる行動をしない。「忠誠の原則」としては約束や秘密を守ることを言います。
倫理綱領
看護倫理原則をもとに日本の看護学会がまとめた「看護職の倫理綱領」は看護職が業務を行う上で倫理的に正しい判断、行動をするための基準を16項目にまとめたものです。
- 人間としての尊厳および権利を尊重する。
- 平等に看護を提供する。
- 看護の対象者と信頼関係を築いた上でケアを行う。
- 対象者の「知る権利」「選択・決定の権利」を尊重し、適切にサポートする。
- 対象者の秘密・個人情報の保護に努める。
- 対象者に不利益や危害を生じた場合、人々を保護して安全を確保する。
- 自分の責任と能力を把握し実施した看護に責任を持つ。
- 常に継続して学習を行い、自分自身の能力の開発・維持・向上に努める。
- 多職種でサポートしあい、より良い保健・医療・福祉を実現する。
- 看護職として望ましい行動基準を設定し、より質の高い看護を行う。
- 研究・実践から専門の知識・技術の創造と開発に努め看護学の発展に貢献する
- より質の高い看護を行うため看護職自身のウェルビーイングの向上を心がける。
- 常に品位を保持し、看護職に対する社会の人々の信頼を高めるように努める。
- 人々の生命と健康に関する様々な問題について社会正義の考え方を持って社会と責任を共有する。
- 看護職としてより良い社会づくりに貢献する。
- 様々な災害支援の担い手と共に働き、災害による影響を受けた全ての人々の生命、健康、生活の保護に貢献する。
臨床倫理
臨床倫理は4分類されており、カンファレンスなので倫理上の問題で治療方針の決定が滞る場合は4つの視点に区分しそれぞれについて患者さんに対する情報を整理します。
- 医学的適応
- 患者の意向・動向
- QOL(幸福追求・生活の質)
- 周囲の状況
医学的適応
患者の医学的な診断や予後、病状。治療の目標と成功の可能性。治療に失敗した場合の対応。医療ケアを受けることが患者さんの利益となるか。
患者の意向・動向
患者が受けたい治療、利益やリスクの説明を受け、理解した上で同意したか・判断能力の有無、治療前の意思表示。患者の代理で方針を決定する人がいるか。治療に協力しない、協力できない。患者の選択する権利が尊重されているか。
QOL
治療した場合・治療しなかった場合の社会復帰の可能性。治療で患者が不利益を被ることがないか。現在・将来の状態は患者にとって苦しい状況となるか。治療を中止する場合、その理由は何か。緩和ケアは受けられるか。
周囲の状況
患者の家族の問題。医療関係者側の問題。経済的な問題。宗教や文化による問題。利用する資源・方法の正当性。治療決定が法的にどのようない意味を持つか。臨床研究・教育に問題があるか。
事例で看護倫理を学ぶ
看護倫理は難しく考えてしまうため、言葉で言われても実際はどのように対応するのかを原則に基づいて考えたいと思います。
事例1
80歳男性、独居にて1人暮らしていたが転倒し尾骨骨折、保存治療にて鎮痛剤とリハビリ併用し歩行困難にて杖歩行開始となった。軽度の認知症がある。地域包括病棟に入院のため60日期限がある。家族は妹夫婦と弟。妹は市外にて同居はできず、本人は自宅に帰りたい。入院前は妹が時折面倒を見ており介護認定を行い、介護度2、食事提供サービスを使用していた。
自律性の尊重
患者は高齢でありもともと独居にて一人暮らし、退院後も独居にて生活してしたいと言われています。家族は同居はできないため施設検討も考えられますが、本人の自律を尊重できるような取り組みをしないといけません。
無危害
患者は鎮痛剤を使っています。リハビリ後は痛みを訴えることもあり、その時は主治医へ確認し指示された屯用の痛み止めを使用しています。内服後の痛みの状況を確認しています。
善行
患者は鎮痛剤とリハビリを併用し杖歩行開始となっています。病棟では患者に合わせた援助をしないといけません。主治医やリハビリの状況に合わせてADL(日常生活動作)をアップしていきます。
公正
患者に対しては平等、公正に対応し、訴えも傾聴します。
誠実の原則・忠誠の原則
患者に対しての返答は嘘をついたり誤魔化したりせず、約束や、秘密も守ります。誠実に対応します。
倫理綱領16項目
それぞれの項目にそって検討すると、期限があり他職種との関わりも配慮し、カンファレンスを行い退院の方向性を決めていきます。ご家族にも配慮を行い、患者本人の意向を伝えていきます。
臨床倫理
医学的方向性、ゴールは退院であること、独居か、施設入所か本人の意向とご家族の意向を合わせて決めていく。患者が利益を感じるように治療していく。患者の受けたい治療、リハビリも行い、どこまでADLをアップしていくか決めていく。軽度の認知症があるため本人の理解ができない場合はご家族にも協力していただき患者へ説明を行う。QOLを考慮した退院後の生活を考えていく。経済的な問題と退院後は介護度に合わせてどのようなサービスが受けられるかをケアマネージャーとも相談していく。
最後に
今回は看護倫理について考えていきました。看護をしていく上では患者の人間性を無視することはできません。生活歴もふまえた援助を行い、人間性に合わせた関わりが必要です。患者だけでなく、ご家族にも同様です。看護倫理を理解することで関わり方も理解することができますし、看護の行い方も変わってきます。忙しい中患者の援助を行うことが多いと思いますが適切なケアを行うために自分の対応がこれでよかったのか不安になる時は一度原点に戻り関わることが必要だと理解することができます。
見ていただきありがとうございました。よかったら別のブログもありますので参照してください。
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