ナース指導者が教える 老年看護学実習Ⅰとは 学んでほしいこと
私は看護学校の実習指導を5年程度しています。現在も行っており、4年間の看護専門学校の実習生の指導をしています。その中で老年看護学実習は高齢者との関わりを通しても学びとなっていますので不安に感じていらっしゃる方はこれを見て参考にしていただけたら嬉しいです。
老年看護学実習Ⅰとは
地域や施設における高齢者との関わりから老年期の持てる力に着眼して自立や安全性を考えた看護を実践する能力を養う実習である。
目標
対象の生活史や価値観の理解を深め身体的、精神科・社会的側面から対象を捉えることができる。高齢者に関心を寄せ尊重した態度がとれる。対象の加齢や疾患、障害による日常の生活機能への影響を包括的にアセスメントし看護展開できる。対象の意思、意欲を尊重し、自立度を維持しながら安全な援助ができる。高齢者の生活を支える職種の役割と重要性を理解すると共にチームにおける看護師の役割が理解できる。高齢者との関わりから老年観を養い、自己の老年観を深めることができる。
老年看護学実習Ⅰの特徴
- 実習期間90時間12日間、2週間弱の期間
- 受け持ち1人を受け持つ(コミュニケーションのとれる患者)
- カルテからの16項目の情報収集
- 情報から全体像把握し問題点を考える
- 問題点から看護計画を立案する
- 看護計画から実践していく
- 受け持ち患者のバイタルサイン、検査見学、入浴見学、更衣見学実施、シーツ交換実施、環境整備見学実施、食事の配膳
- 実践後の評価
- カンファレンス
老年看護学実習の受け持ち患者の疾患
慢性期病棟にて高血圧症、認知症、慢性疾患、糖尿病、胃瘻増設後、誤嚥性肺炎治療後などの患者を選定します。
事例1
患者A氏女性90歳、施設入所中。40歳代の頃から二型糖尿病に罹患しており、インスリンを朝夕定期的に看護師にて注射している。発熱を繰り返し、一般病棟にて治療後血糖コントロール継続、リハビリ目的にて療養病棟に転棟した。
事例2
患者B氏男性85歳、独居にて生活していたが認知症にて生活できず、入院する。入院後高血圧治療も兼ねて療養病棟へ転棟した。今後は施設入所予定である。
老年看護学実習のスケジュール
実習1日目
実習のオリエンテーションがあります。内容は病棟の紹介、感染対策、安全対策、実習態度、個人情報の大切さなどを学びます。基礎看護学実習でも詳しく話しているのでその内容を再度確認するようになります。患者選定は指導者が学生の人数に合わせて患者を決めてご本人やご家族に了承を得ているのでその患者の中から自分の受け持ち患者を決めます。受け持ち患者の挨拶、カルテより情報収集後に患者からのコミュニケーションでの情報収集も行います。初日は病棟の1日の流れを見学します。その学びを指導者や看護学校の先生を含めたカンファレンスで話し合います。
実習2日目から5日目
実習2日目から疾患や患者さんからの情報を16項目に分けて情報を整理し全体像を把握します。全体像を把握後問題点を挙げてその後看護計画を立案します。問題点があっているのか、看護計画があっているのかは指導者と看護学校の先生に確認しながら進めていきます。カンファレンスにて問題点や看護計画の発表を行い指導者が指導を行います。また受け持ち患者のバイタルサインや環境整備の見学実施、入浴見学、シーツ交換実施、リハビリ見学、検査見学などを行い受け持ち患者の学びを深めていきます。バイタルサインや環境整備は指導者の実施見学から学生の実施まで行います。
実習6日目から12日目
カンファレンスは最初はぎこちないですが実習日数が経つにつれてしっかりと進めることができ話し合いもできるようになります。療養病棟は他職種との連携も必要となり、退院後へ向けての指導も必要となりますので病棟カンファレンスのも含めて他職種(ソーシャルワーカー・リハビリ・栄養士・薬剤師・医師・看護師・介護士)の連携も実際に見て学ぶことができます。また退院後の生活について入院中から話し合いを進めて決めていく様子だったり受け持ち看護師の役割や固定チーム制であることを学びスタッフみんなで協力しないと業務は行えないということを学ぶことができます
指導者が思う看護学生に学んでほしいこと
老年看護学実習Ⅰは高齢者の特徴を踏まえた患者さんとの関わりが必要であり、疾患に対しても数多くの疾患を持っている患者が含まれています。しっかりと病歴も含めて理解する必要があります。またADLも低下しておりオムツを使用していて介助を必要とする患者も多くいます。褥瘡を作らないために体位交換をしたり、清拭や皮膚トラブル予防にて陰部洗浄をしたり、褥瘡を持っており処置を行っている患者を担当している看護学生もいるため病態理解以外に処置の理解も必要となります。情報をもとに全体像を把握するのは重要となりますのでしっかり情報収集をしなくてはいけません。バイタルサインの値も状況によって変動したり拘縮があって測定できなかったり浮腫があったりとバイタルサインを行うための工夫も必要です。退院へ向けてというよりは療養生活へ向けて必要な関わりとはと考えて関わることが大切です。認知症を持ってる患者は多く、声かけの仕方や夜間入眠を促すための日中の関わり方も考慮することが大切です。実際勉強した内容と病棟での状況を比べて多くのことを学んでほしいと思います。追加事項として
- 体調管理
- 実習態度
- 積極的に実習に取り組む
- 報告・連絡・相談をきちんと行う
- 学生同士で協力してカンファレンスも進める
最後に
今回は老年看護学実習Ⅰについて書きました。学んでほしいことは急性期を終え、慢性期となった患者の入院患者に対する援助、処置、清潔ケア、など介助を多く必要とする患者が多くいて、認知症も含めて数多くの疾患を理解して関わっていくことが大事であることが言えます。高齢者は転倒、転落もする可能性、トラブルを起こす可能性もあると理解した上で対策をしたり観察をしたりすることが大切です。言葉遣いも高齢患者さんであり人生の先輩と捉えてきちんと会話を行っていくことも大切と思います。老年看護学実習Ⅰで参考にしていただけると嬉しいです。見ていただきありがとうございました。
別のブログにて成人看護学実習と実習について作ったブログを載せています。よかったら参考にしてください。
また看護計画立案方法についてのブログを作っています。よかったらみてください。
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