ナース指導者が教える 注射の種類と安全に行うための6R取り決めとは
注射には種類があり、行い方にも違いがあります。また安全に行うために私の病院でもしっかりとした確認方法の取り決めがありますので参考にしていただけると嬉しいです。
注射の種類
注射には皮下注射、皮内注射、静脈注射、筋肉注射があり、それぞれ手技や注意点が異なります。薬効が現れる速さにも違いがあり、早い順から静脈、筋肉、皮下、皮内という順番になります。したがって副作用の発現時間の差にも注意が必要です。注射方法は薬剤によっても違うので知っておかないと患者さんに行うことはできません。
インスリン注射について
糖尿病患者さんは膵臓で作られるホルモンインスリンが不足して起こる病気です。インスリンは血糖値を調節する役割があります。
インスリン治療が必要になる時
1型糖尿病:膵臓からインスリンがほとんど分泌されなくなるため、インスリン注射が必要です。
2型糖尿病:筋肉や肝臓でインスリンが働きにくくなったり、インスリンの分泌が少なくなった時に、インスリン注射によって補い、体内のインスリンの働きを回復させます。
また、血糖が高い状態が続いた時に膵臓が障害されてインスリン分泌が悪くなる。「高血糖による毒性」という悪循環が生じている場合にもインスリン注射を行います。こうすることで膵臓の動きが回復してインスリンを使わなくても血糖コントロールができるようになることもあります。
インスリン注射の種類(作用)
超速効型インスリン製剤:超速効型インスリン製剤は食直前に自己注射します。注射後、インスリン作用が現れるまでにかかる時間は10から20分、インスリンの作用が持続する時間は3から5時間です。
速効型インスリン製剤:食前に自己注射します。注射後インスリンの作用が現れるまでにかかる時間は30分から1時間、インスリンの作用が持続する時間は5から8時間です。
中間型インスリン製剤:朝食前30分いないのものや、朝食直前のものがあり、これらは時に1日の投与回数を増やして自己注射することができます。注射後、インスリンの作用があらわれるまでにかかる時間は30分から3時間、インスリンの作用が持続する時間は18時間から24時間です。
混合型インスリン製剤:朝食直前のもの朝食直前と夕食直前のもの、朝食前のものや、朝食前と夕食前30分以内に自己注射するものがあります。超速効型または速効型インスリン製剤と中間型インスリン製剤を色々な割合で混ぜてある製剤です。超速効型または速効型インスリン製剤と中間型インスリン製剤のそれぞれの作用があらわれるまでにかかる時間に効果が出ますが持続時間は中間型インスリンとほぼ同じです。
配合溶解インスリン製剤:食直前に1日1回または朝食直前と夕食直前の1日2回自己注射します。超速効型インスリン製剤と持効型溶解インスリン製剤を混ぜてある製剤です。超速効型インスリン製剤と持効型インスリン製剤のそれぞれの作用があらわれるまでにかかる時間に効果が出ますが、作用時間は持効型インスリンとほぼ同じです。
持効型溶解インスリン製剤:朝食前のもの。夕食前のもの、就寝前のもの、朝食前と夕食前のものや朝食前と就寝前に自己注射するものがあります。注射後インスリンの作用が現れるまでにかかる時間は1から2時間、インスリンの作用が持続する時間はほぼ1日にわたります。1日中の血糖値を全体的に下げます。
インスリンの種類(バイアル・ペンタイプ)
インスリンはバイアルとペンタイプがあります。バイアルはバイアルにインスリンが入っており、注射器は専用のものがあります。
ペンタイプは注射器自体にインスリンが入っています。自己注射用になっていますので使いやすいようになっています。ペンタイプはダイアルを回して医師指示の単位を合わせて腹部に施行となります。お腹の肉をアルコール消毒後、掴み皮下に注射するイメージです。
ペンタイプは専用の針をつけて施行するので針を刺したら10秒数え、注射後は指に刺さないように抜きます。同じ場所にせず朝と夕で場所を変えて施行します。同じ場所にし続けると皮下出血や硬結する場合があります。
なぜ10秒数えるかというと皮下に注射しているのですぐ抜くことで薬液も出てしまう可能性があるからです。10秒数え皮下に浸透させてから抜きます。
針の種類
医療機関などで主に使用される注射はりの太さは16Gから27Gです。検査の採血は21から22G、輸血の場合は18から20G 、筋肉注射は21Gから23Gを使用します。インフルエンザワクチンなどの皮下注射は26の細い針を使用します。
注射の手技
6Rの確認:誤薬予防のための6R
確認項目です。これを意識し確認しながら行います。
- 正しい患者
- 正しい薬剤
- 正しい量
- 正しい方法
- 正しい時間
- 正しい目的
皮下注射
皮下注射必要物品
皮下注射実施手順
- エプロン、手袋装着。
- 6Rの確認。
- 薬液を指示箋と確認する
- 針や注射器の期限を確認。針や注射器を無菌操作にて取り出しセットする。
- アンプルをアルコール綿花で消毒し清潔操作にてカットし注射器で清潔操作にて薬液を吸う。
- 手袋装着患者さんへ説明する。
- 患者さんに座位になってもらい、注射部位を(腕を)出していただく。腕が曲げられる方は無理のない程度に曲げていただく)
- 刺入部位は肩峰と肘頭を結んだ線の下から1/3の点を確認する。注射部位を掴み皮下脂肪の厚さ5mm以上あることを確認。
- 刺入部位を中心に外側に向かって円を描くようにアルコール綿で消毒し乾燥するまで待つ。
- 注射針のキャップを外し利き手と反対側の手で注射部位の外側の皮膚を摘んで持ち上げ注射針のカット面を上に向けた状態で針を刺す。
- 皮膚面に対し10〜30度の角度で皮下に針を刺す。
- 激痛や痺れや血液の逆流がないことを確認し薬液を注入する。
- 薬液の注入が終了したら素早く抜針しアルコール綿を当てて止血を確認する。
- 抜針した針と注射器は医療廃棄物容器にそのまま捨て(鋭利なものを捨てる医療廃棄物の容器)患者さんの衣服を整える。
筋肉注射
筋肉注射必要物品
エプロン、手袋装着、アルコール綿花(アルコールアレルギーがある場合はアルコール未使用の消毒使用)、バイアル(薬液)、注射器(2〜5ml)、針(22G〜23Gどちらか使用)、トレイ、指示箋、針捨て医療廃棄物容器(鋭利なものを捨てる箱)
筋肉注射実施手順(上腕部)
- エプロン、手袋装着
- 薬液を指示箋と確認する
- 針や注射器の期限を確認。針や注射器を無菌操作にて取り出しセットする。
- アンプル(薬液が入った物)をアルコール綿花で消毒し清潔操作にてカットし注射器で清潔操作にて薬液を吸う。
- 患者さんへ説明する。
- 患者さんに座位になってもらい、注射部位を(腕を)出していただく。腕が曲げられる方は無理のない程度に曲げていただく)
- 刺入部位は肩峰と肘頭を結んだ線の上から1/3の点を確認する。注射部位を掴み皮下脂肪の厚さ5mm以上あることを確認。
- 刺入部位を中心に外側に向かって円を描くようにアルコール綿で消毒し乾燥するまで待つ。
- 注射針のキャップを外し利き手と反対側の手で注射部位の外側の皮膚を摘んで持ち上げ注射針のカット面を上に向けた状態で針を刺す。(筋層の厚さが少ない場合、神経損傷や血管内への誤注入の危険性があるため皮膚をつまみあげ筋層を確認し針の刺入角度と深さを判断し実施する)
- 注射針を45〜90度の角度で2/3程度(約2cm)刺入する。(皮下脂肪層の厚い場合は90度、皮下脂肪層が浅い場合は45〜60度)で刺入する。
- 激痛や痺れや血液の逆流がないことを確認し薬液を注入する。
- 薬液の注入が終了したら素早く抜針しアルコール綿を当てて止血を確認する。
- 抜針した針と注射器は医療廃棄物容器にそのまま捨て(鋭利なものを捨てる医療廃棄物の容器)患者さんの衣服を整える。
筋肉注射の禁忌:血小板減少症、血友病など出血傾向のある患者や筋肉発達途上にある小児の場合
筋肉注射実施手順(臀部)
皮膚面に対し90度の角度で筋肉組織に注射針を刺す。(鉛筆のように持ちながら) 激痛や痺れ、血液の逆流がないかを確認しながら薬液をゆっくり注入する
皮内注射
皮内注射必要物品
エプロン、手袋装着、アルコール綿花(アルコールアレルギーがある場合はアルコール未使用の消毒使用)、バイアル(薬液)、注射器(1ml使用することが多い)、針(26から27Gどちらか使用)、トレイ、指示箋、針捨て医療廃棄物容器(鋭利なものを捨てる箱)
皮内注射実施手順
エプロン、手袋装着
患者さんへ説明する。
患者さんに座位または注射しやすい体位になってもらい、注射部位を(前腕)出していただく。皮膚が柔らかく(血管や神経が少ない部分、体毛が少ない部分、炎症など皮膚トラブルが起きていない部分)
刺入部位は肩峰と肘頭を結んだ線の下から1/3の点を確認する。注射部位を掴み皮下脂肪の厚さ5mm以上あることを確認。
刺入部位を中心に外側に向かって円を描くようにアルコール綿で消毒し乾燥するまで待つ。
皮膚を伸展させながら刺入する。(注射器を持っていない方の手で皮膚を進展させながら、注射しんを皮膚面に対しほぼ平行にすくい上げるように刺入する。(注射針のカットの面が全て隠れるまで針を進める)
針先が動かないように固定しながら皮膚を進展させていた手を静かに離し、薬液をゆっくり注入する。
抜針した針と注射器は医療廃棄物容器にそのまま捨て(鋭利なものを捨てる医療廃棄物の容器)患者さんの衣服を整える。
私の病院での取り決め
最初の方で書きましたが、誤薬防止や自己に誤って刺す針刺を予防しないといけません。6Rをきちんと行い、基本に戻りしっかり確認しないといけません。患者さんの名前の声出し確認、注射薬液と指示箋、いつ実施か、注射直前も直後も確認、最後に破棄する時ときちんと確認が必要です。事故を起こさないようにきちんと確認をしていきます。また感染予防にも注意してきちんと手洗い、消毒を行い、清潔操作にて実施するようにしています。各病院でも指導方法は違いはあると思いますが、マニュアルに沿ってすることが必要です。わからないときは先輩看護師に確認したり、マニュアルに戻ったりしてきちんと確認してから実施します。
最後に
画像など自分で作成したため、見にくさもあると思いますが、ご了承ください。またわかりやすくできるように今後も検討していきます。見ていただきありがとうございました。
点滴編もあります。よかったらご覧下さい。
インスリンについても詳しく別ブログで詳しく書いています。よかったらご覧ください。
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