ナース指導者が教える 高齢者の食事介助の現状と誤嚥を防ぐ方法
入院患者は高齢者であることが多く、脳血管疾患や廃用症候群で嚥下機能低下して食事を自己摂取できず、ベッド上でテーブルをおき、セッティングで摂取されたり、自己摂取できない方はスタッフの介助で食事摂取を行っています。この現状と誤嚥を防ぐために行っている方法をお伝えしたいと思います。
高齢者の嚥下機能低下と摂食嚥下障害
入院患者は高齢者であることが多い、また疾患により嚥下機能低下・摂食嚥下障害を起こすことも多い。嚥下機能低下・摂食・嚥下障害とは接触・嚥下の一連の過程のどこかに障害が生じている状態。誤嚥や窒息、脱水の原因となる。長期にわたる低栄養を引き起こし、誤嚥性肺炎の原因となる。その原因は摂食嚥下器官の奇形、欠陥、腫瘍やその術後、炎症といった器質的な要因や摂食嚥下器官の感覚・運動障害といった機能的要因により誤嚥性肺炎を起こしやすい。誤嚥性肺炎の死亡率は急性疾患の中でも最も高く、20〜40%に達する。誤嚥性肺炎は口の中の唾液や食べ物が気管に入り込むことで口の中の細菌が肺まで到達して炎症を引き起こす病気です。高齢者の肺炎の7割以上が誤嚥性肺炎で高齢者の死亡原因として知られています。誤嚥性肺炎は抗生剤で治すことができますがその根本原因を治すことはできないため繰り返して発症し亡くなる場合があります。
参考サイト:メディカルノート
高齢者の食事摂取状況
高齢者のADL(日常生活動作)食事摂取の自立度がが違います。ベッドサイドに端座位になり摂取する方法、ベッド上でオーバーテーブルを置き自己摂取する方法、上肢が動かずスタッフの食事介助で摂取する方法などがあります。また車椅子に移乗し体制が安定する様子であれば車椅子に移乗し食堂で摂取する場合もあります。自力で摂取する患者は誤嚥の危険性は少ない場合がありますが、食事は嚥下機能の程度に合わせてお茶にトロミをつけたり、食事をミキサー食や主食をかゆや、軟飯、飯など変更したりと状況に応じて食事形態を変えて対応しています。栄養部が判断することが多いですが入院時は前施設での食事形態を参考に看護師が検討し主治医に許可をいただき開始します。食事は疾患の状況に合わせて減塩食などに変えることもあります。食事の内容は主治医が決定しますがアレルギーがある場合もあるので栄養部とも相談を行い検討します。
嚥下機能低下のある患者の嚥下評価
嚥下機能評価にはいくつか方法があります。改訂水飲みテスト(MWST)、唾液飲みテスト、フードテスト、頸部聴診法、嚥下造影検査(VF)、嚥下内視鏡検査(VE)などがあり、主治医指示により行われ、医師と言語療法士介助のもと行われることが多いです。
改訂水飲みテスト(MWST)
嚥下なし、むせる、呼吸切迫などの評価基準があり、評点が3点以下で問題ありとされています。
唾液飲みテスト
中指で喉ぼとけを軽く押さえた状態で30秒間唾液を飲み続け連続して何回かゴックンと飲み込めるかを確認します。
フードテスト
ティースプーン1杯(約4g)のプリンを嚥下させ、嚥下後に口腔内を観察し、残留の有無、位置、量を確認します。
頸部聴診法
食べ物を飲み込む動作の時聴診器を使って首の部分で嚥下音が聞こえるかどうかを聴診します。
嚥下造影検査(VF)
レントゲン透視下でバリウムなどの造影剤を飲み込んでもらい飲み込みの状態を診断する検査です。
嚥下内視鏡検査(VE)
鼻孔からファイバースコープを挿入して嚥下時の咽頭・喉頭の動きを観察する検査です。
参考サイト:健康長寿ネット
誤嚥を防ぐ方法
- 食事摂取後は30分は頭部アップを行なっておく。
- 食事時義歯がある場合は義歯の装着を行う。
- トロミのない茶で飲む時に嚥下状態を確認しておき、必要時はトロミを使用する。
- 嚥下評価に伴い、食事形態を検討し嚥下状態を観察する。
- 嘔吐後やむせがあった際は発熱に注意する。
- むせた時は吸引も定期的に行う。
- 嚥下評価の内容を統一して行う。
看護師が行う嚥下機能低下の患者の援助
看護師は入院後に嚥下評価が行われる前から介入することが多く、食事介助の際に一口摂取しむせが見られたらその時点で判断し中止することが多いです。その状態を記録に残し、言語療法士が栄養部と相談し食事形態を検討します。絶食から食事開始する際に嚥下テストを行うことが多く、VF後の指示でトロミの使用程度と食事形態を検討しています。毎食に言語療法士が介入はできないため看護師が嚥下テストの結果を確認し頭部の角度やスプーンの大きさ、一口の程度などの情報を統一して援助を行っています。嚥下検査後は嚥下訓練で食事形態をアップしていき、患者の状態に合わせてカロリーも栄養部や言語療法士が検討していきます。
最後に
今回は食事摂取の際の食事介助の方法と誤嚥を防ぐ方法に対して書きました。絶食から食事が再開される場合に嚥下評価を行うことも知っていただけるといいかと思います。看護師が関わることが多く、日常での食事介助や内服介助の際に誤嚥を防ぐ方法は必要となるので参考にしていただきたいと思います。
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